【高校化学】ボルタ電池の分極は間違い?実際に起こっている反応をご紹介
この噂、実は本当なんです。
ボルタ電池は分極が起こってしまうのは間違いないのですが、過酸化水素、すなわち減極剤を入れると起電力が復活する、というのは厳密にいうと間違えになっています。
今回は、教科書では触れられていない
ボルタ電池の本当の原理と反応についてご紹介したいと思います。
より深く高校化学を理解したい方はぜひご覧ください。
(ちなみに、入試ではこちらの理論ではなく、教科書に載っている原理で90%出題されます。もしかしたら導入つきではでるかもしれませんが。)
☆ そもそもボルタ電池の分極と減極剤の効果とは
ボルタ電池は世界で1番初めに発明された電池で、すぐに使い物にならなくなってしまう(=分極してしまう)ことで知られています。
ボルタ電池が分極してしまう理由として、
正極で電子を受け取った水素イオンが水素分子になり、その水素分子が銅電極を覆いかぶせてしまうため
電解液に電子が流れ込めなくなるために起こる、というのが一般的に説明される理由でした。
詳しくは、こちらのページで解説していますのでご覧ください。
一方、過酸化水素が減極剤として働くので、ボルタ電池に過酸化水素を入れると起電力が回復する、というのも一般的に言われている説です。
減極剤とは、本来電子を受け取る物質よりも酸化力が強いもの(この場合は水素よりも電子を受け取りやすいもの)のことを指します。
減極剤として過酸化水素を入れれば、水素イオンの代わりに過酸化水素が電子を受け取ってくれるため、水素分子が発生しない。
よって、電解液に電子が流れ込み続けられるので、起電力が復活する、というわけです。
というこれらの話は、教科書に載っている話です。
実際は、ボルタ電池の分極が起こってしまう理由は水素分子ではないですし、
過酸化水素を入れると起電力が復活する理由は、水素イオンの代わりに過酸化水素が電子を受け取ってくれるからじゃありません。
(過酸化水素の話は遠くもないですが。)
よって、ここからは、実際のボルタ電池で起こっている本当の反応をご紹介したいと思います。
☆ ボルタ電池が最初は滞りなく動くわけ
ボルタ電池というのは負極が亜鉛で、正極は銅電極を使っていました。
その銅電極の表面っていうのは、酸化されて(錆びて)酸化銅になっています。
つまり、ボルタ電池っていうのは
の反応が起こっているわけではなく
の反応が実際は起こっているわけです。
この酸化銅が全て消費された時点で、ボルタ電池は動かなく(=分極)なります。
だから、ボルタ電池が分極する実際の理由は、水素分子で銅電極が覆われたからではなく
酸化銅が全て消費されたから、なんですね。
☆ もう一つの分極を起こす理由
水素過電圧って言葉を知っていますか。
水素の留まりやすさを表している言葉です。
水素過電圧が大きいほど水素が留まりづらく、水素過電圧が小さいほど水素が留まりやすいです。
水素過電圧はZn>Cuになっています。
なので、銅電極の方に水素は留まりやすい。
言ってしまえば、水素イオンが電子を受け取って水素分子になる反応は、水素過電圧が小さい銅電極で起こりやすいのは確かだけど
亜鉛電極側でも、水素イオンが電子を受け取って水素分子になる反応は同時に起こっているんです。
亜鉛側でも、水素イオンが電子を受け取っている、これが何を意味するかというと
亜鉛電極側で電子のやり取りが完結している分、銅電極に放出される電子の数は少なくなりますよね。
よって、起電力が下がってしまうことを意味するのです。
そこで正極寄りに、電子を受け取る能力がある過酸化水素(減極剤)を入れれば、
正極に過酸化水素があるんだから、正極で電子を受け取る反応が起きます。
そしたら、正極に流れ込んでいく電子が増えるので、起電力が復活する、というわけです。
これが本来のボルタ電池の一連の流れになっています。
☆ おまけ
つまり、負極での水素分子の発生を抑えることができれば(=負極での水素イオンと電子のやり取りを抑えることができれば)
ボルタ電池でも十分な起電力で活用することができるわけです。
負極での水素分子の発生を抑えるためには、亜鉛電極を水素過電圧が大きい物質で覆ってしまえばいいです。
そうすれば、水素分子が留まることができなくなり、負極での水素分子の発生がなくなります。
かつて、マンガン電池は水銀で負極側をコーティングしていました。
なぜ、負極を水銀でコーティングしたかというと、水銀は水素過電圧が大きくて水素分子が留まることができないから。
水銀をコーティングすることによって、比較的電池を長持ちさせることができたのです。
☆ まとめ
実際のボルタ電池は
の反応が起きている。
電池が分極するのは
・表面にある酸化銅が消費された
・亜鉛電極だけで、電子のやり取りが完結してしまう
から。
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