【高校化学】水酸化ナトリウムは電気分解からできている!工業的製法である陽イオン交換膜法の原理を徹底解説
強塩基として馴染みがあり、高校化学においてよく見かける化合物の一種です。
水酸化ナトリウムは石鹸を作るのに利用されていたりして、日常生活においても、受験化学においても、水酸化ナトリウムの工業的製法は大切な役割を持っています。
今回は、そんな超重要物質である水酸化ナトリウムの製法である「陽イオン交換膜法」について原理から徹底解説していきたいと思います。
陽イオン交換膜法は論述問題を問われることが多い分野です。
しっかりと理屈を踏まえて理解できるようにしましょう。
☆ 陽イオン交換膜法とは
電気分解を用いた、水酸化ナトリウムNaOHの工業的製法です。
「陽イオン交換膜法といえば?」「水酸化ナトリウムの工業的製法!」って、すぐに答えられるようにしましょう。
こういう単純な問題が、よく入試に出題されます。
陽イオン交換膜法は
電極:陽極 炭素C 陰極 鉄Fe
電解液:陽イオン交換膜で仕切られていて、陽極側 NaCl水溶液 陰極側 水に薄い水酸化ナトリウムを溶かしたもの
で電気分解する方法となっています。
つまり、塩化ナトリウムの電気分解から水酸化ナトリウムは生成しているわけです。
陽イオン交換膜で電解液が仕切られていること、交換膜の片方にしか塩化ナトリウムを入れていないことがポイントです。
各極のイオン反応式であったり
陽イオン交換膜の役割や、そもそも陽イオン交換膜とはなんなのか
これらのことが入試で聞かれやすいので、1つ1つ確認していきたいと思います。
☆ 陽イオン交換膜とは
陽イオン交換膜は、陽イオンしか通すことのできない半透膜のことをいいます。
半透膜というのは、特定の粒子しか通すことのできない膜のことをいいましたね。
半透膜の反対側に粒子が移動するには、移動を手助けするための原動力がなくてはいけません。
詳しくはダニエル電池の分野で、半透膜について詳しく解説しているのでそちらをご覧ください。
【高校化学】ダニエル電池の原理を徹底解説!ボルタ電池との違いや素焼き板の意味は? - 化学の偏差値が10アップするブログ
では、どうして陽イオン交換膜は陽イオンのみを通すことができるのか。その原動力は何なのでしょうか。
陽イオン交換膜は、マイナスの電荷でコーティングされています。
プラスの電荷を持っている同士や、マイナスの電荷を持っているもの同士は反発する
プラスとマイナスの意符号の電荷を持っているものは引きつけ合います。
よって、プラスの電荷を持つ陽イオンが、陽イオン交換膜を通過しようとすると、反発してしまうので通過できない
マイナスの電荷を持つ陰イオンはプラスに引きつけれて、交換膜を通過できる
ということになります。
☆ 陽イオン交換膜法の原理
・ 各極での反応
陽イオン交換膜法はあくまでも、塩化ナトリウムの電気分解です。
電気分解ということで、各極のイオン反応式を作っていきたいと思います。
【高校化学】電気分解の各極のイオン反応式の作り方やルールを徹底解説!フローチャート通りにやれば簡単に作れる - 化学の偏差値が10アップするブログ
↑電気分解のイオン反応式の作り方はこちら
こちらの画像を見ながら確認していきます。
(陽極)
陽極では電子を放出する酸化反応が起きるのでした。
各極の反応式の作り方に従ってみていくと
① 電極をみる
炭素なので安定 → 変化なし
② 電解液をみる
塩素化物イオンCl−(ハロゲン化物イオン)あり
→ ハロゲンの単体が生成
(陰極)
陰極では電子を受け取る反応が起きています。
電極自身は電子を受け取る能力はないので、最初から電解液を確認するのでしたね。
① 電解液をみる
水素よりもイオン化傾向が小さいものはなし
→ 水の電気分解、水素が発生
各極の反応を図示すると下のようになります。
・ 陽イオン交換膜を移動するイオン
ここで、陽イオン交換膜を通過するイオンを確認していきましょう。
半透膜についてしっかり理解している人は、暗記ではなく考えて導くことができると思います。
電気分解中の電解液では、先ほど確認した通り
陽極側では、塩化物イオンが消費されて、塩素分子が発生
陰極側では、水が電子を受け取って、水素と水酸化物イオンが発生
しています。
つまり、
陽極側は塩化物イオンが消費されたけど、ナトリウムイオンNa+はそのまま残っている
すなわち、プラスの電荷が多くなっている状態である
陰極側は水酸化物イオンが生成した分、マイナスの電荷が多くなっています。
電解液の電荷の総和に偏りがあるとき、電荷が打ち消される方向にイオンの移動が起きます。
ただ、今回は陽イオン交換膜によって仕切られているので、マイナスの電荷を持つ陰イオンは半透膜を通過できません。
よって、陽極側のナトリウムイオンが陽イオン交換膜を通って、陰極側へと移動するような反応が起きます。
すると、
陰極側には、水酸化物イオンとナトリウムイオンが同時に存在することになりますね。
つまり、水酸化ナトリウムが陰極側で生成するわけです。
電気分解をすればするほど、陰極側の水酸化ナトリウムの濃度は濃くなっていきます。
これを取り出すことによって水酸化ナトリウムを得ているのが、陽イオン交換膜法です。
☆ おまけ、陰極側に水酸化ナトリウムを少しだけ溶かす理由
陰極側は純粋な水ではなく、少しだけ水酸化ナトリウムを溶かしておきます。
なぜ、水酸化ナトリウムを溶かす必要があるのでしょうか。
純粋な水はほぼ電離しておらず、純粋な水のみだと電気を通せなくなるからです。
(厳密にいうと電気は通るが、大量生産する工業的製法には水の電離程度の電気の流れでは効率が悪いです。)
電気が流れるのは、電離しているイオンが電気を運んでくれるから。
水というのは、水の電離平衡でも学習したように
程度しか電離しておらず、電離度はとても小さいんでしたよね。
純水はあまりにも電離度が小さすぎて、なかなか電気分解によって電気を通すことができない、
生産性を上げるためにも、より電気が通るように純水ではなく、純水に水酸化ナトリウムを微量とかしたもので電気分解が行われています。
だから、陽イオン交換膜はゼロから水酸化ナトリウム作るというよりかは
陰極側の水酸化ナトリウムを濃いものにしていくイメージです。
☆ まとめ
陽イオン交換膜法とは
陽イオン交換膜で電解液を仕切って、塩化ナトリウムを電気分解することによって、水酸化ナトリウムを生成する反応である。
各極では
の反応が起こっている。
陽イオン交換膜はマイナスの電荷を帯びているので、陽イオンしか通すことができない。
化学の偏差値10アップを目指して、頑張りましょう。
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