【高校化学】塩素の実験的製法を徹底解説!水と濃硫酸を逆にしたら一体どうなる?
塩素の実験的製法は、無機化学において論述問題で問われやすい範囲の一つです。
「水と濃硫酸を逆にするとどうなるか」という問いに戸惑いを覚えた人も多いのではないでしょうか。
今回は塩素の実験的製法において、上の疑問についての答えや実験装置の原理について徹底解説していきたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
☆ 塩素の実験的製法の化学反応式
まずは、塩素の実験的製法の化学反応式について確認していきたいと思います。
塩素の実験的製法の化学反応式は以下の2種類です。
どちらも酸化還元反応を利用しています。
酸化還元の半反応式を作ることができれば自分で導くこともできますが、基本的には時間が間に合わなくなってしまうので覚えることをおすすめします。
今回はよく入試に頻出する、酸化マンガンと塩酸を用いた塩素の実験的製法の装置について確認していきます。
☆ 塩素の実験的製法の装置
塩素の実験的製法の装置は下のようになっています。
酸化マンガンが入ったフラスコに、水、濃硫酸の順番でそれぞれが入っている集気瓶がつながっています。
この順番がとても大切です。それぞれ細かく確認していきましょう。
また、酸化マンガンと塩酸による塩素の実験的製法では、塩素以外の副産物として水と塩化マンガンが生成します。
同時に未反応の塩化水素も不純物として混在している状態です。
塩化マンガンは固体ですので、そのままフラスコ内に残りますので簡単に取り除くことができますが、
水(水蒸気)と塩化水素は塩素の気体と一緒に混ざってしまっています。
水と塩化水素をどのようにして取り除くのかというのが、大事なポイントです。
・水の入った集気びんの役割
水は、不純物である未反応の塩化水素を取り除くために利用します。
物質の溶解性について、
極性分子は極性溶媒に、無極性分子は無極性溶媒に。似たもの同士が互いに溶けやすいということを、理論化学で学習したと思います。
塩化水素は極性分子ですので、同じく極性分子の水に溶かすことができます。
よって、極性分子同士は溶解するという性質を生かして、水で塩化水素を取り除きます。
極性の見分け方はこちら【化学基礎】極性分子と無極性分子の見分け方をわかりやすく解説 - 化学の偏差値が10アップするブログ
・濃硫酸の入った集気びんの役割
濃硫酸は、不純物である水を取り除くために利用します。
濃硫酸は有名な乾燥剤であり、脱水作用を持ちます。
濃硫酸の脱水作用により、水を取り除くことができます。
・塩素の捕集方法
塩素は空気よりも重たい気体ですので、下方置換法で捕集します。
空気の分子量は28.8です。
空気の分子量の導き方は割愛しますが、この数値は使い勝手が良いので覚えてしまうことをおすすめします。
一方、塩素の分子量は71です。
分子量から見ても、塩素が空気よりも重たいことがわかります。
☆ 水と硫酸を逆にすると、なぜダメなのか。
結論からいってしまうと、水と濃硫酸の入っている集気びんを逆に接続すると、純粋な塩素を集めることができません。
その理由を確認していきましょう。
水と濃硫酸の位置を逆にした場合の、塩素の実験的製法の実験装置は下のようになります。
わかりますでしょうか。
上で説明した原理と同じように、逆にした場合は先の濃硫酸で水を、後の水で塩化水素を取り除きます。
せっかく先に濃硫酸で水を取り除いたのに、後から水で塩化水素を取り除いたのでは、
塩化水素を取り除くために利用した水が水蒸気となって、塩素と混在してしまいますよね。
よって、塩素の実験的製法では、水→濃硫酸の順番で集気びんをつなげることになります。
☆ まとめ
塩素の実験的製法の化学反応式は
の2種類である。
塩素の実験的製法の装置において、
水では塩化水素を、濃硫酸では水を取り除き、塩素は下方置換法で捕集する。
集気びんは水→濃硫酸の順番で接続しなくてはならない。
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