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【高校化学】ビニロンの作り方・合成方法を徹底解説!なぜ吸湿性がある?アセタール化する理由も

 

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日本人が初めて合成した繊維として有名なビニロン

ビニロンの合成方法は、大学入試でも記述問題として出題されがちですよね。

 

今回はビニロンの合成方法について、構造式を交えながら徹底解説していきたいと思います。

入試に記述問題として出題されがちな部分についてもわかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

⭐︎ ビニロンとは

 

ビニロンは、以下のような構造式をもつ合成繊維の一種です。

 

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1939年に桜田一郎が開発した、日本初の合成繊維となっています。

 

ビニロンは強度が強く、合成繊維では珍しい「吸湿性をもつ」という特徴を持っています

ここからはビニロンの合成方法や、吸湿性をもつ理由などについて確認していきたいと思います。

 

⭐︎ ビニロンの合成方法

 

ビニロンは以下の3ステップで合成されています。

 

① 酢酸ビニルを付加重合する

② ①で生成したポリ酢酸ビニルをけん化して、ポリビニルアルコールにする

③ ポリビニルアルコールの20〜30%くらいをアセタール化する

 

  1. ここからは各段階について細くみていきたいと思います。

 

① 酢酸ビニルを付加重合する

 

酢酸ビニルを付加重合します。

 

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二重結合のπ結合が切れて、ポリ酢酸ビニルが生成します。

 

② ポリ酢酸ビニルをけん化して、ポリビニルアルコールにする

 

けん化というのは、塩基を使ったエステルの加水分解のことをいいました。

ポリ酢酸ビニルをけん化することで、ポリビニルアルコールが生成します。

 

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ここで確認してほしいことが1つあります。

「なぜ酢酸ビニルで付加重合した後、けん化をしてポリビニルアルコールを作るという面倒くさい手順を踏んでいるのか」ということです。

 

最終的にポリビニルアルコールが欲しいのなら、最初からビニルアルコールを付加重合すればいいですよね。

 

なぜ最初からビニルアルコールを付加重合しないのかというと、ビニルアルコールは不安定なので、ケトエノール互変異性によってアセトアルデヒドになってしまうからです。

 

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よって、ビニルアルコールを付加重合するのは不可能なので、わざわざ酢酸ビニルを付加重合し、けん化することでポリビニルアルコールを作っています。

よく記述問題で出題されますので、押さえておきましょう。

 

③ ポリビニルアルコールを20〜30%くらいアセタール化する

 

最後にポリビニルアルコールを20〜30%くらいアセタール化します

アセタール化いうのは、ポリビニルアルコールが持っているヒドロキシ基2個中の水素原子と、ホルムアルデヒドの酸素原子を脱水する操作です。

 

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全てのヒドロキシ基をアセタール化するのではなく、大体20〜30%ほどのヒドロキシ基をアセタール化します。

 

ポリビニルアルコールは、ヒドロキシ基を持っているからこそ水素結合により強力な吸湿性を有します。

アセタール化を一切しないと水分を取り込みすぎて、最終的には繊維が水に溶けてしまいます。

水に溶けてしまっては、本来の繊維としての役割を果たすことができません。

 

だからといって全てのヒドロキシ基をアセタール化してしまうと、吸湿性が一歳なくなり、本来のビニロンの良さが損なわれてしまいます。

 

なので、吸湿性を保ちつつ水に溶けないギリギリのラインとして、20〜30%くらいのヒドロキシ基をアセタール化をし、ビニロンは完成となります。

 

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⭐︎ まとめ

 

ビニロンは以下の3つのステップで合成できる。

 

① 酢酸ビニルを付加重合する

② ①で生成したポリ酢酸ビニルをけん化して、ポリビニルアルコールにする

③ ポリビニルアルコールの20〜30%くらいをアセタール化する

 

ビニロンが吸湿性を示すのは、水素結合を有するため。

アセタール化は、ビニロンが完璧に水に溶けないようにするために行われる。

 

化学の偏差値10アップを目指して、頑張りましょう。

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