化学の偏差値が10アップするブログ

化学の偏差値が10アップするブログ

「原理」をしっかり学ぶことで、皆さんの化学の偏差値を上げる手助けをするブログ。主に高校化学の内容の解説や勉強方法を発信しています。

【高校化学】凝固点降下の原理をわかりやすく徹底解説!なんで電解質の方が凝固点が下がりやすいの?

 

f:id:nobita_60:20200826224950j:image

 

凝固点降下の原理はわからないけど、とりあえず公式を丸暗記する受験生の方は多いはず。

原理がわかっていないと、公式以外の問題が出てきたとき、対応するのは難しいですよね。

 

今回は凝固点降下の原理を、公式の導き方を踏まえて徹底解説していきたいと思います。

公式を丸暗記するのではなく、考えて式を作れるようになりますよ。

 

 

 

凝固点降下とは

 

凝固点降下とは、純粋な溶媒よりも希薄溶液の方が凝固点が低くなる現象のことをいいます。

 

なんだか定義を聞くと難しいような感じがしますが、要は

何も溶けていない溶媒よりも、何かが溶けている溶液の方が凝固点が低くなってしまう、ということです。

水よりも食塩水の方が凝固点は低くなるのですね。

 

f:id:nobita_60:20200826225006j:image

 

ちなみに、凝固点降下希薄溶液の性質の1種です。

希薄溶液とは、濃度が薄い溶液という認識で大丈夫です。

 

希薄溶液の性質は大きく分けて、

① 蒸気圧降下/沸点上昇   ② 凝固点降下   ③ 浸透圧

の3つがあります。

 

これらの3つは共通テストで、正誤判定問題として同時に出題されることがとても多いので、まとめて勉強するのがおすすめです。

沸点上昇、浸透圧の記事はこちら

(後日アップ予定!)

 

凝固点降下の原理

・ 純粋な溶媒のみの凝固点

 

何も溶けていない純溶媒の場合、凝固点は溶媒そのものの固定の値に由来します。

 

また、押さえておきたいポイントとしては、純溶媒が凝固する過程において

融解が起こる速度=凝固が起こる速度

が成立しているということ。

つまり、溶けるスピードと固まるスピードが一致しているわけですね。

 

f:id:nobita_60:20200826225022j:image

 

このように、溶けるスピード(融解)と固まるスピード(凝固)が同じなので、一見何も起こってないように見える現象のことを溶解平衡といいます。

純溶媒のみの場合、溶解平衡の状態に物質はあります。

 

 

・ 希薄溶液の場合

 

次に、溶媒に何かが溶けている場合、すなわち希薄溶液の場合の凝固点を確認していきたいと思います。

もう一度、純溶媒のみの凝固点の様子をみてみましょう。

 

f:id:nobita_60:20200826225035j:image

 

溶媒しかないので、凝固を邪魔するもの(=阻害するもの)がありません。

その結果、溶解平衡が起こっているのでしたね。

 

では、溶質が溶けている状態の希薄溶液はどうでしょうか。

 

当然ですが、溶質が溶けてる分、凝固する結晶の周りは純溶媒のみのときよりも、溶媒粒子に対する溶質粒子の割合が大きくなります

すると、溶媒粒子が凝固するのを溶質粒子に邪魔されてしまうので、凝固する溶媒粒子の数が少なくなります

 

f:id:nobita_60:20200826225051j:image

 

その結果、融解が起こるスピード>>>凝固が起こるスピードとなり

溶解平衡の状態が崩れ、凝固する温度が純溶媒のみのときより低くなります。

溶質粒子に溶媒粒子が凝固するのを邪魔されることによって、凝固点が下がる現象、これが凝固点降下となっています。

 

 

凝固点降下の公式

 

先に結論から言ってしまうと、凝固点降下の公式は次のようになっています。

 

f:id:nobita_60:20200826225200j:image

 

公式に出てくるmは質量モル濃度といって、溶媒粒子の質量(kg)に対する溶質粒子の個数を表したものになっています。

 

凝固点降下は、溶媒が凝固するのを溶質粒子に邪魔されるから起こるのでした。

つまり、溶媒に対する溶質粒子の数がたくさんあればあるほど、溶媒の凝固は起こりづらくなりますよね。

 

凝固点降下の公式は、溶媒を邪魔する溶質粒子の個数(=質量モル濃度m)と凝固点降下は比例の関係にあるというのを表したものです。

モル凝固点降下Kは比例定数で、溶媒ごとに固有の値をとります

(モル凝固点降下溶媒ごとに特定の定数だと知らない人が割と多いです。そのことを理解しているかどうかを判断する入試問題は多いので、しっかり押さえましょう。)

 

溶液中の溶質粒子(凝固を邪魔する粒子の個数)に比例して凝固点が下がるのだから、同じモル濃度であっても

電離してイオンの状態になっている電解質の方が凝固点降下の割合は大きいことがわかります。

 

 

凝固点降下の例題

 

最後に共通テストや私立の入試問題で良く出題される練習問題を解いて終わりにしたいと思います。

 

(例題)純粋な水に1kgに、濃度が同じア〜エの物質を違うビーカーでそれぞれ溶かした。この中で最も凝固点が低くなるもの、ア〜エの記号で答えなさい。

 

ア グルコース    イ 硫酸ナトリウム   ウ 塩化ナトリウム    エ 尿素

 

 

(答え)

 

イ 硫酸ナトリウム

 

 

(解説)

 

凝固点降下溶液となったあとの溶質粒子の数が多ければ多いほど、大きくなります

この問題の場合、溶質の溶液となる前のモル濃度は全て同じです。

溶媒の量も全て同じ。

ということは、溶液となった後の溶質粒子の数が多いものが、溶媒に対する溶質粒子の数が多くなり、凝固点も低くなりますね。

 

アのグルコースとエの尿素は非電解質です。

1分子を溶かしたら、溶かした後も電離しないので1分子です。

 

イの硫酸ナトリウムとウの塩化ナトリウムは電解質です。

なので、電離した後の粒子の個数を確認してみます。

 

f:id:nobita_60:20200826225214j:image

 

電離のイオン反応式はそれぞれ上記のようになっています。

硫酸ナトリウムは、硫酸ナトリウム1分子から合計3分子のイオン

塩化ナトリウムは、塩化ナトリウム1分子から合計2分子のイオン

生成しているのがわかりますね。

 

f:id:nobita_60:20200826225222j:image

 

よって、溶液となった後の溶質粒子が1番多いのはイの硫酸ナトリウムです。

凝固を邪魔する溶質粒子も1番多いので、凝固点が最も低くなります

 

 

☆ まとめ

 

凝固点降下は、

溶媒粒子が凝固をするのを、溶質粒子が邪魔をすることによって起こる。

 

凝固点降下は溶媒に対する溶質粒子の割合(=質量モル濃度)と比例するので、公式は次のようになる。

 

f:id:nobita_60:20200826225200j:image

 

化学の偏差値10アップを目指して、頑張りましょう。

またぜひ、当ブログにお越しください。

 

 

過冷却曲線についての記事はこちら

(後日アップします。)