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「原理」をしっかり学ぶことで、皆さんの化学の偏差値を上げる手助けをするブログ。主に高校化学の内容の解説や勉強方法を発信しています。

【高校化学】浸透圧とは?簡単に簡単にわかりやすく説明!公式の導き方と計算問題の注意点

 

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浸透圧の原理をいまいち理解せずに、公式だけ丸暗記している方も多いですよね。

なんとなく計算はできるけど、公式に代入する以外の問題になると対応ができない方も多いと思います。

 

今回は、浸透圧の原理とファントホッフの浸透圧の公式の導き方、よくある間違えなどを徹底解説していきたいと思います。

3つ目の希薄溶液の性質となっております。凝固点降下や沸点上昇と合わせて確認しておきましょう。

 

 

 

 

☆ 浸透とは

 

浸透圧とは何なのかを理解する前に、浸透という現象について理解しましょう。

高校化学における浸透とは、濃度の薄い方から濃い方へと溶媒が移動する現象のことをいいます。

 

教科書などでよく用いられる図をみながら原理を説明していきたいと思います。

 

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このように半透膜を使って、U字管を半分に区切ります。

半透膜の右側には純粋な水(溶媒のみ)をいれ、半透膜の左側には溶液(何かが溶けている状態)を入れます

これをしばらく放置するとどうなるでしょうか。

 

まず、押さえておかないといけないポイントとしては、半透膜とは何かということです。

半透膜とは特定の粒子のみを通すことができる膜のことをいいます。

浸透圧における半透膜は、溶媒粒子は通すことができるけど、溶質粒子は通すことができない膜となっています。

半透膜には粒子レベルの細かい穴が開いていて、粒子の大きさによって半透膜を通過できるものを選別しています。

 

※ダニエル電池のところでも、半透膜については触れています。

【高校化学】ダニエル電池の原理を徹底解説!ボルタ電池との違いや素焼き板の意味は? - 化学の偏差値が10アップするブログ

 

U字管の半透膜部分を拡大してみてみましょう。

 

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半透膜の穴は、溶媒粒子のように小さい粒子は通過できるけど、溶質粒子のように大きい粒子は通過することができません

その結果、例えばの話にはなりますが、図の状態だと

純溶媒から溶液(左から右)には、溶媒粒子は5粒分、半透膜を通過することができるが

溶液から純溶媒(右から左)には、溶質粒子に移動を邪魔されるため、溶媒粒子は2粒分しか通過できない

ということが起こります。

 

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純溶媒から溶液へは、5粒分の溶媒粒子が移動している

溶液から純溶媒へは、2粒分の溶媒粒子が移動している

ということは、相対的に3粒分の溶媒粒子が純溶媒から溶液へと移動しているわけです。

 

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溶媒粒子の移動は、純溶媒⇄溶液へと双方間でおこっています。

ただ、溶液から純溶媒へと移動する溶媒粒子の個数は、溶質粒子に邪魔をされてしまうため、純溶媒から溶液へと移動する溶媒粒子の個数より少なくなります

相対的に見ると、濃度が薄い方(純溶媒)から濃度が濃い方(溶液)へと溶媒粒子が移動しているように見えます。

この現象が浸透です。

 

 

☆ 浸透圧とは

 

先ほどのU字管に戻りたいと思います。

 

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このように、先ほどのU字管を放置しておくと、純溶媒から溶液へと溶媒粒子が移動していくので溶液側の液面が上昇します。

 

浸透圧の定義は実は2つあり、

1つ目は、単純に純溶媒から溶液へと溶媒粒子が流れるこむときの圧力のことをいいます。

2つ目は、溶液側の液面が上がらないように無理やり押さえつけたときの圧力をいいます。

 

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なので、普通に浸透をするときの圧だけではなく

上記の図のように、液面差が出ないように無理やり溶液側から押さえつけたときの力も浸透圧です。

 

2つの定義はしっかり頭に入れておきましょう。

 

 

☆ 浸透圧の公式の導き方

 

先に結論を言うと、浸透圧を求める公式のことをファントホッフの式といい、

公式自体は次のようになっています。

 

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ファントホッフの公式を導いてみたいと思います。

 

まず、浸透圧と単位体積あたりの粒子の個数(=濃度)は比例の関係にあります。

なぜかというと、純溶媒との濃度の差が大きければ大きいほど、溶液から純溶媒側に移動する粒子の個数は少なくなり

(濃度が濃いということは、邪魔をする溶質粒子が多いということ)

相対的な溶媒粒子の移動する数(=浸透)が大きくなるからです。

 

また、浸透圧と温度も比例関係にあります

こちらは単純に温度が上がると熱運動が激しくなり、粒子間の移動も激しくなるからです。

 

これらのことから、ファントホッフの公式が導かれるわけです。

 

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(※ 魚みたいな記号は比例を表す記号です。)

 

先程言ったように、純溶媒と溶液の濃度差が大きいほど、浸透圧も大きくなるのでした。これは邪魔する溶質粒子の数が増えるからです。

よって、電解質(イオン性の物質)の場合は、ただ公式に代入するだけではなく、電離した後の粒子の個数を公式のnの部分にかけてあげる必要があります

電離した分だけ、邪魔をする溶質が増えるのだから当たり前ですね。

ただ、電解質の場合は電離後の粒子の個数でかけてあげるというのを忘れがちな人が多いので、注意してください。

 

ちなみに、比例定数Rが気体の状態方程式と同じになる理由は、入試問題で問われないので知る必要はありません

状態方程式と浸透圧の定数が同じになることを発見した人が昔、ノーベル科学賞をもらったくらい難しい話になってきますので

ここでは割愛したいと思います。

 

 

☆ 公式以外のよくある計算問題

 

U字管に戻ります。

浸透は永遠に起こるわけではなく、ある一定の濃度になったとき終わりを迎えます

純溶媒が全て溶液側に移動するまで浸透がおこるわけではありません。

 

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浸透が終わる、つまり、状態が変化しないということは(物質が動かないということは)

浸透圧と何か他の力がつり合っているということ

浸透圧とつり合っている力はなにでしょうか。

 

浸透圧とつり合っている力は、上昇した溶液分の重力です。

 

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浸透圧と、上の図のピンクで囲った部分の重さが一致したとき、浸透の現象がなくなるのです。

なので、浸透圧というのはファントホッフの式だけではなく、このように書き換える事もできます。

 

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上の関係性を用いた計算問題として、水銀柱が絡んだものが入試でよく出題されます。

セミナーや問題集などにその手の問題が載っているはずなので、これらの関係性を意識しながら問題を解いてみて欲しいなと思います。

 

 

☆ 最後に

 

浸透とは

相対的に見て、濃度が薄い方(純溶媒)から濃度が濃い方(溶液)へと溶媒粒子が移動する現象。

 

浸透は、溶質粒子が溶液から純溶媒へと溶媒粒子が移動しようとするのを邪魔することによって起こる。

 

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化学の偏差値10アップを目指して、頑張りましょう。

またぜひ、当ブログにお越しください。