【高校化学】幾何異性体とはいったい何?見つけ方をわかりやすく解説!【シストランス異性体】
よく有機化学の構造決定問題で出題されるけど、いまいちピンとこない人が多いのが幾何異性体。
なんとなくわかるけど、自分でしっかりと概念を説明できる人は少ないですよね。
今回は幾何異性体(シストランス異性体)について、見分け方などを徹底解説していきたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
⭐︎ 幾何異性体とは
幾何異性体とは、
立体異性体の一種で、二重結合で結合する炭素原子への置換基の配置が異なる異性体のことをいいます。
別名「シストランス異性体」です。
定義だけ聞いてもピンとこない人も多いと思うので、しっかりと説明していきたいと思います。
⭐︎ 立体異性体
そもそも立体異性体の定義が曖昧な人がいると思うので確認しておきます。
立体異性体とは、構造式は同じだけど立体配置が違うもの同士の関係性のことを指します。
例えば、下の2つの化合物は構造式の向きが違いますが、回転させたらピッタリと一致するので、同じ物質だと言えます。
回転には2パターンあって、分子そのものが回転する場合と、単結合が回転する場合です。
もう一つ例を出すと、下の2つは違う書き方をしていますが、単結合を回転させたらピッタリ重なるので同じ物質です。
逆説的になってしまいますが、異性体とは「回転したもピッタリ一致しないもの」です。
立体異性体は「立体のみ」の異性体なので、構造式は同じだけど「回転しても立体配置がピッタリと一致しないもの」となります。
⭐︎ 幾何異性体のイメージ
幾何異性体は立体異性体の一種なので、「構造式は同じ」だけど「回転しても立体配置はピッタリ一致しないもの」です。
幾何異性体は、二重結合を持っているときに生じる可能性があります。
なぜなら、二重結合は回転できないからです。
簡単な例なのですが、いちごに爪楊枝が1本だけぶっ刺さっているとします。
爪楊枝を片方の手で固定していちごの果実を手で回すと、いちごの果実自体は回転しますよね。
このように爪楊枝が1本、すなわち単結合は回転できるので、ピッタリと一致することができます。
しかし、このような場合はどうなるでしょうか。
今度はいちごに2本の爪楊枝がぶっ刺さっているとします。
2本の爪楊枝を手で固定していちごの果実を回そうとしても、いちごの果実は回すことができませんよね。
爪楊枝が2本、すなわち二重結合は回転することができません。
よって、幾何異性体というのは
二重結合が回転できないからこそ、立体配置をピッタリと一致させることができないことによって生じる関係性だといえます。
原因は二重結合が回転できないことにあるので、幾何異性体は二重結合を持つ場合に検討することになります。
⭐︎ 幾何異性体の見分け方
まずは二重結合を見つけます。
二重結合が回転ができないがために起こる立体異性体ですので、二重結合がない場合は幾何異性体は考えられません。
二重結合を見つけた後は、二重結合を持つ炭素に注目します。
結合は2つの原子を介して作られますので、二重結合に関与している炭素は2つありますね。
炭素の手(結合できる数)は4本ですので、そのうち2本が二重結合に使われている状態です。
幾何異性体は二重結合に使われていない残りの2本に着目することで見分けることができます。
具体的にいうと、
二重結合を持つ2つの炭素原子がどちらとも、残りの2本の手に違う原子団がくっついていた場合、幾何異性体を持ちます。
幾何異性体を見分ける公式です。
例を出して考えています。
下のような画像の場合は、二重結合に関与している炭素原子の片方が、残りの2本の手に水素という同じ原子を持ってしまっているため幾何異性体を持ちません。
一方下の画像のような場合は、二重結合に関与している炭素原子のどちらとも、残りの2本の手に違うものを持っているので幾何異性体を持ちます。
なお、次の構造式を持つ物質は幾何異性体を持ちますが、左の構造がシス体(同じ原子団が上下のどちらかに偏っている。)といい、右の構造をトランス体(同じ原子団が上下別々の方向に位置している)といいます。
⭐︎ まとめ
幾何異性体とは、
立体異性体の一種で、二重結合で結合する炭素原子への置換基の配置が異なる異性体のこと。
シス体とトランス体がある。
幾何異性体は二重結合が回転できないことによって生じる。
幾何異性体を見分ける公式は次の通りである。
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