化学の偏差値が10アップするブログ

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「原理」をしっかり学ぶことで、皆さんの化学の偏差値を上げる手助けをするブログ。主に高校化学の内容の解説や勉強方法を発信しています。

【高校化学】電池の基本的な原理と、ボルタ電池の仕組みを徹底解説!各極の反応や分極する理由は?

 

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電池について習ったけど、原理がいまいちわからない。

式の意味もいまいちわからないし、電池って結局暗記の分野なのかな。

 

…そんなふうに考える方はとても多いです。

しかし、電池の分野は暗記ではなく、原理をしっかり理解して、自分で組み立てていく分野となっています。

 

今回は、苦手な方が多いとされる「電池」の原理、あるいは世界で1番最初に作られた電池である「ボルタ電池」について、図などを用いて徹底解説していきたいと思います。

これを読めば、理屈から化学反応式や分極が起きる原因などを自分の言葉で説明できるようになるはずです。

 

 

 

☆ 電池とは

 

電池とは、酸化還元反応の化学的エネルギーを外部に取り出す装置のことです。

 

酸化還元反応っていうのは、電子をあげたり受け取ったりする反応のことを言いましたね。

そのやり取りしている電子を外部に取り出す装置を電池と言います。

 

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ここで考えて欲しいのですが、一般的な酸化還元反応というのは酸化剤と還元剤が衝突することによって起こります

衝突によって、酸化剤と還元剤が衝突した瞬間(=くっついた瞬間)に、くっついたところを通して電子のやり取りが起こっています

つまり何が言いたいのかというと、一般的な酸化還元反応というのは、

酸化剤と還元剤の分子内で電子のやり取りが完結しているので、外部に電子を取り出すことができません

 

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(※資料集に出てくる程度の話になっていますが、こういった外部に電子が出ていかない電池のことを局部電池といいます。)

 

 

そこで、あえて離れているところに酸化剤と還元剤を設置して、外部にエネルギー(電子)を取り出せるようにした装置が電池となっています。

 

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電池とはなんなのか、大まかにお分かりいただけたでしょうか。

ここからは、世界で1番最初に発明された「ボルタ電池」を用いて、電池の詳しい原理を説明していきたいと思います。

 

 

☆ ボルタ電池とは

 

先ほども述べたように、世界で1番最初に発明された電池です。ボルタさんが発明したから、ボルタ電池という名前がついてます。

 

電池とは、離れたところであえて酸化還元反応を起こして、外部にエネルギーを取り出したもののことをいいました。

ボルタ電池の概要を表した図が下にあります。

 

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この図を用いて、電池の原理を詳しく見ていこうと思います。

 

 

☆ 電池のしくみ

 

皆さん、イオン化傾向とはなんだったか覚えていますでしょうか。

イオン化傾向を忘れてしまった方は、こちらで復習してください。

【化学基礎】イオン化傾向とは何なのかを徹底解説!語呂合わせと使い方もご紹介 - 化学の偏差値が10アップするブログ

 

 

電池を理解する上では、イオン化傾向は欠かせない知識となっています。

 

ボルタ電池は図で見た通り、亜鉛Zn電極と銅Cu電極を導線でつないだものを、希硫酸で浸したものです。

 

ここで確認して欲しいのは、銅と亜鉛イオン化傾向の序列です。

亜鉛Znの方が、銅Cuよりもイオン化傾向が大きい

すなわち、電子を放出して陽イオンになりやすいんでした。

 

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イオン化傾向の違う金属が2個以上集まった場合は、イオン化傾向の大きい方が電子を放出して陽イオンになる反応が起こります

よってボルタ電池では、亜鉛Znの電極が電子を放出して亜鉛イオンになり、放出した電子は銅側へと流れ込んでいくような反応が起こります

 

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亜鉛Znは電子を放出している、つまり電子を失っているので、亜鉛側では酸化反応

銅Cu側には電子が流れ込んでくる、つまり電子を受け取っているので、銅側では還元反応

が起こっているということになります。

 

 

電池では、

酸化反応が起きている方の電極を負極還元反応が起きている方の電極を正極

と言います。

 

ボルタ電池の場合、亜鉛が負極で、銅が正極となります。

 

もう1つ大切なのは、

酸化還元反応は、電子を放出する物質と受け取る物質、この 2つがないと成立しないということ。

 

電子を放出する物質が亜鉛なのはわかった。

じゃあ、受け取る物質は誰なんだろう、そこを考えていきたいと思います。

 

まず、1番最初に電子を受け取る候補としてあがってくるのが銅です。

しかし、銅は電子を受け取ることができません

なぜなら銅は金属の単体なので、電子を受け取って陰イオンになるより、電子を放出して陽イオンなりたい物質だからです。

イオン化傾向でもやりましたね。)

 

電極(銅Cu)は電子を受け取ってくれないことがわかった、

ということで、次の候補としてあげられるのは、電解液中のイオンたちです。

今、電解液の中には、

硫酸由来の水素イオンと硫酸イオン、そして負極で溶け出した亜鉛イオンがあります。

 

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硫酸イオンはマイナスの電気を持っている正極には近づくことができないので、

この中で候補は、水素イオンと亜鉛イオンに絞ることができます

 

そして、イオン化傾向亜鉛Zn>水素Hなので、水素の方がイオンから分子に戻りやすい

ということで、正極では水素イオンが電子を受け取って水素分子に戻るような反応が起きます

 

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ボルタ電池では、

亜鉛が電子を手放して亜鉛イオンに(酸化反応

水素イオンが電子を受け取って水素分子に(還元反応

が起こっているということがわかります。

 

この反応を化学反応式で表すとこのようになります。

 

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原理をしっかりわかっていれば、自分で導けるものとなっています。

 

 

☆ ボルタ電池は長持ちしない

 

ボルタ電池は永遠に機能することはありません。

永遠どころか、数秒ほどで電池としての寿命が尽きてしまいます

電池が使い物にならなくなる現象を電池の分極といいます。

 

ボルタ電池で分極が起こる原因は、

発生した水素分子が銅電極を取り囲んでしまい、水素分子に邪魔されて電子が電解液へと流れ込めなくなるからです。

 

亜鉛電極から放出された電子は、銅電極を通って電解液へとわたり、水素イオンに受け取ってもらわなくてはいけません。

水素分子に邪魔されることによって、電解液へ電子が流れ込めなくなる、

…これは水素イオンが電子を受け取れないことを意味するので、酸化還元反応が成立しません。

電池の分極が起こってしまいます。

 

 

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☆ 電池の分極を直す方法

 

電池の分極を直す方法は1つだけあり、それは

減極剤を入れるという方法です。

 

その原理ですが、

要は水素分子が発生しなければ、電池の分極は起きないわけです。

つまり、水素イオンが電子を受け取らなければ水素分子は発生しないので、電池の分極も起きません

 

よって、本来電子を受け取るはずだった物質(ボルタ電池の場合は水素イオン)よりも電子を受け取る能力が強い物質

すなわち、本来電子を受け取るはずだった物質よりも強い酸化剤を電解液の中に入れてしまえば

水素イオンの代わりにソイツが電子を受け取ってくれるので、水素分子が発生しなくなるわけです。

 

 

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このように、本来電子を受け取るはずだった物質よりも強い酸化剤のことを減極剤といいます。

 

ボルタ電池の減極剤として有名なのは、過酸化水素とか。

ボルタ電池に過酸化水素を入れれば一瞬だけ、電池として復活します。一瞬ですが、笑

 

 

☆ まとめ

 

電池とは

あえて離れたところで酸化還元反応を起こすことによって、外部に電子を取り出す装置

 

ボルタ電池は

負極が亜鉛で、正極が銅、電解液は硫酸

 

各極では

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このような反応が起こっています。

 

しっかり電池の原理を理解していれば、電極や電解液の組み合わせが変わっていても、1からイオン反応式等を作ることができるはずです。

どんな入試問題にも対応できるよう、原理から仕組みを導き出せるようにしておきましょう。

 

 

化学の偏差値10アップを目指して、頑張りましょう。

またぜひ、当ブログにお越しください。