【高校化学】硫酸の工業的製法である接触法の原理を解説!触媒や発煙硫酸など
硫酸は最も有名な酸の1つで、脱水作用があることから有機化学でも頻出する物質となっています。
用途がたくさんあり、高校化学を語る上では欠かせない物質です。
今回はそんな硫酸の工業的製法である「接触法」の原理などを、わかりやすく徹底解説していきたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
☆ 接触法とは
接触法とは、先ほども述べた通りですが硫酸H2SO4の工業的製法となっています。
接触法の原料は硫黄Sです。
原料から3つの工程を経て、硫酸は生成されます。
ここからは1工程ずつ丁寧に原理を確認していきたいと思います。
☆ 接触法の原理
・工程1 硫黄を加熱して、二酸化硫黄にする
原料の硫黄を加熱して二酸化硫黄SO2を作るのが、第1工程となっています。
鉱山中に入っている硫黄原子を加熱して酸化することによって、二酸化硫黄を作っています。
化学反応式は下のようになります。
また、一昔前までは黄鉄鉱FeS2を燃焼することによって、二酸化硫黄を得ていました。
現在はあまり使われていない方法であり、1つ目の化学反応式がメジャーとなっています。
・工程2 二酸化硫黄を触媒を用いて加熱し、三酸化硫黄とする
第2工程目は、工程1で得られた二酸化硫黄を酸化バナジウムV2O5触媒を用いて加熱をし、三酸化硫黄SO3にする工程となっています。
化学反応式は下の通りです。
第2工程で大切なのは、必ず触媒が必要だということ。
どの触媒を使うのかは考えてわかるものではないので、酸化バナジウムという名前と化学式はしっかり覚えましょう。共通テストで頻出です。
なぜ触媒が必要なのかというと、二酸化硫黄はとても安定な物質です。
二酸化炭素と同じ分子の形をしており、酸素と硫黄が強力な二重結合で繋がっていることからも、化学変化を起こすのが容易ではないことが想像できるのではないでしょうか。
つまり、安定な二酸化硫黄で化学反応を起こすためには、活性化エネルギーがたくさん必要なのです。
酸化バナジウム触媒によって、活性化エネルギーを減少させることによって何とか進行している反応となっています。
・第2工程の補足と酸化バナジウム触媒の理由
ちなみに、第2工程目の化学反応は可逆反応(平衡状態)であり、「発熱反応」となっています。
回収率を上げるためには、ルシャトリエの法則的に低温にする必要がありますが、それでは反応速度が遅くなってしまい、コストの面から見て効率が悪いです。
なので、第2工程は逆反応が起こらないギリギリの温度である200〜600℃で反応を進行させます。
また、諸説ありますが、酸化バナジウムは表面積が大きい状態でも200〜600℃の高温にも耐えることができることから、触媒として採用されたと考えられています。
・工程3 三酸化硫黄を濃硫酸に溶かして発煙硫酸にし、希硫酸で薄める
三酸化硫黄を濃硫酸で溶かすと、発煙硫酸になります。これに希硫酸を加えて薄めるのが第3工程です。
上の化学反応式に書かれている水分子は、希硫酸中の水分子です。
三酸化硫黄は非金属の酸化物(=酸性酸化物)ですので、水と反応するとオキソ酸(今回は硫酸)を作ります。
ただし、硫酸の溶解熱は非常に大きいです。
普通に水分子と反応させたら、硫酸が混じった水が沸騰してしまい、有害な蒸気が辺りに散らばってしまいます。
これを防ぐために純粋な水ではなく、あえて既存の硫酸を使って発煙硫酸という形で三酸化硫黄を溶かしています。
ちなみに、発煙硫酸は霧状の蒸気を常に出しており、煙を出しているように見えることから発煙硫酸と名付けられました。
水ではなく濃硫酸で三酸化硫黄を溶かす理由は入試で頻出ですので、しっかりと自分の言葉で説明できるようにしましょう。
三酸化硫黄を発煙硫酸にしたら、そこに既存の希硫酸を加えて適当な濃度にすることで、目的物である硫酸の完成です。
(ここでももちろん、溶解熱の関係性から水ではなく希硫酸で薄めています。)
☆ まとめ
接触法とは、硫酸の工業的製法であり、酸化バナジウムを触媒として用いる。
接触法は3つの工程があり、各化学反応式は下の通りである。
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