【化学基礎】イオン結晶の特徴や性質を徹底解説(割れやすい理由、電解質・非電解質など)
イオン結晶の性質は、共通テストの正誤判定問題などをはじめとして、入試問題に頻出な分野となっています。
入試問題で、イオン結晶の正誤判定問題などをみたことある人も多いはず。
今回はイオン結晶の特徴および性質を、入試に出やすいところを重点的に徹底解説していきます。
電解質と非電解質の用語の確認や、割れやすい理由なども原理から説明していますので、ぜひ最後までご覧ください。
☆ イオン結晶とは
イオン結晶とは、陽イオンと陰イオンが静電気力によって集合してできた結晶のことをいいます。
静電気力は、陽イオンの持つプラスの電荷と陰イオンの持つマイナスの電荷が引き付け合う力をいいます。
イオン結晶の粒子は、プラスの粒子同士やマイナスの粒子同士が接触してしまうと反発してしまうため、プラスの粒子とマイナスの粒子が交互に並んでいます。
以上のことを踏まえて、イオン結晶の特徴について確認していきましょう。
☆ イオン結晶の特徴 一覧
イオン結晶には以下のような特徴があります。
⚫︎ 融点が高い
⚫︎ 硬いが、もろい
⚫︎ 水溶液は電気を通す
それぞれの理由を確認していきましょう。
・ 融点が高い理由
この感覚が大切なので掴めるようになって欲しいのですが、融点とは、粒子がバラバラになる時の温度をいいます。
もっといえば融点とは、固体における粒子同士の結合が切れて、粒子が流動し始める(=動き始める)時の温度をいいます。
よって、結合が強ければ強いほど粒子はバラバラになりづらいので、融点は高くなります。
静電気力による結合のことを、イオン結合と言いました。
イオン結合は比較的に強い結合ですので、粒子はバラバラになりづらく、融点は高くなります。
・ 硬いが、もろい理由
イオン結晶は、先ほども述べたように結合力が強いので、バラバラになりづらいという特徴を持っています。
バラバラになりづらい、すなわち硬いということになります。
では、もろい理由は一体なんなのでしょうか。
共通テストなどでも「もろい」という表現を使っているので、ここでも「もろい」という表現を使いますが
「もろい」というのは、「割れやすい」ということになります。
割れやすい理由は、入試でも問われることがあるので確認していきましょう。
イオン結晶は、プラスの粒子とマイナスの粒子が交互に並んでできています。
繰り返しますが、隣あわせの粒子同士は硬いイオン結合で繋がれているので、滅多なことがない限り結晶が壊れることがありません。
しかし、とんでもない力が一定方向に働いて、粒子の配列がずれてしまったらどうなるのでしょうか。
例えば、下の図の矢印の向きに粒子配列を崩してしまうほどの大きな力が働き、図のように粒子配列が移動してしまったらどうなるでしょうか。
普段はプラスとマイナスの粒子が交互に並んでいるはずなのに、プラス同士とマイナス同士が横並びになってしまっています。
同じ符号の粒子同士は反発し合いますので、イオン結晶は下の図のように割れていってしまいます。
この一連の流れが、「イオン結晶は(普段は)硬いが、もろい(割れやすい)」という表現になっています。
・ 水溶液は電気を通す理由
まず初めに、抑えておきたい単語があります。電解質と非電解質です。
電解質とは、水に入れると電離をする物質
非電解質とは、水に入れても電離をしない物質
のことをいいます。
電離とは陽イオンと陰イオンに水溶液中で分かれることで、イオン結晶は一部の例外を除き電解質です。
電離したイオンが電気を運んでくれる役割をするので、イオン結晶は水に溶かすと電気を通します。
ちなみに、よくある共通テストの引っかけ問題として、「イオン結晶は電気を通す」という正誤判定問題があります。
答えは×です。
イオン結晶はあくまでも電離した状態で電気を通すのであって、結晶(固体)の状態では電気を通さないからです。
本当によく出題される問題になっていますので、しっかりと確認しておきましょう。
☆ まとめ
イオン結晶とは、陽イオンと陰イオンが静電気力によって交互に並んでできた結晶。
イオン結晶の性質として、
⚫︎ 融点が高い
⚫︎ 硬いが、もろい
⚫︎ 水溶液は電気を通す
がある。
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【高校化学】銅の工業的製法と精錬をわかりやすく徹底解説!電解精錬の原理は?
10円玉にフライパンなど、銅は様々なものに利用されていますよね。
銅は使い道が多い元素ですので、銅を大量生産するための方法である工業的製法は日常生活においても、とても重要なものとなっています。
今回はそんな銅の工業的製法や、銅の精製方法である電解精錬についてわかりやすく解説していきたいと思います。
ぜひ、最後までご覧ください。
☆ 銅の工業的製法の概要
まずは銅の工業的製法の大まかな流れについて説明していきます。
銅の工業的製法は、大きく2つの工程に分けることができます。
銅の原料は黄銅鉱CuFeS2になっています。
黄銅鉱は鉱山中に多く含まれている物質であり、そこから不純物を取り除くことによって純粋な銅を作っていきます。
黄銅鉱の名前自体も入試で問われることが多いので、しっかりと覚えておきましょう。
銅の工程は
工程1 黄銅鉱を加熱をして、粗銅を作る
工程2 粗銅を電気精錬して、純銅を作る
の2段階です。
ここからそれぞれの工程を丁寧に解説していきたいと思います。
ただ、最初に断言をしておきますが、
銅の工業的製法のメイン(入試で問われる部分)は工程2の電気精錬ですので、工程1は参考程度に、工程2は原理を含めてしっかりと対応できるように学んでいきましょう。
☆ 工程1 黄銅鉱から粗銅を作る
黄銅鉱を転炉に入れ、酸素を吹き込みながら加熱をすると、硫化銅が生成します。
ここで発生した二酸化硫黄SO2は気体ですので熱風によって飛んでいきますが、
もう一つの不純物であるFeSiO3は固体ですので、スラグという形で下に沈殿します。
下にたまったスラグを取り除くことで、硫化銅のみを取り出すことができます。
その後、転炉内に酸素を吹き込むことによって、下のような化学反応式で表すことのできる反応が起こります。
この反応により生成する銅Cuが粗銅(そどう)であり、粗銅には多くの不純物が残っています。
☆ 工程2 粗銅を電気分解して純銅にする
粗銅には不純物が多く含まれていますので、どうにかしてこれらを取り除かなくてはいけません。
そのための方法を電気精錬と呼び、電気分解の一種となっています。
銅の電気精錬するための装置は、下の図のようなものです。
陽極には粗銅、陰極には純銅(純粋な銅)、電解液は硫酸銅水溶液で電気分解します。
電気分解ですので、ここから陽極、陰極のイオン反応式を作っていきたいと思います。
電気分解の式の作り方はこちら。【高校化学】電気分解の各極のイオン反応式の作り方やルールを徹底解説!フローチャート通りにやれば簡単に作れる - 化学の偏差値が10アップするブログ
・陽極のイオン反応式
陽極のイオン反応式は、①電極を確認する、②電解液を確認する、の順番で作っていくのでした。今回も同じように作っていくと、
① 電極を確認する
→ 電極はPt、C以外である。
→ 電極自身が溶け出す反応が起こる!
よって、陽極のイオン反応式は下のようになります。
・陰極のイオン反応式
陰極のイオン反応式は、①電解液を確認する、という一つの手順のみで作っていくのでしたね。同じように作ってみましょう。
① 電解液を確認する
陽極の反応が起きた時点で、電解槽の中身は上のようになっています。
粗銅は様々な金属が不純物として含まれていたものです。
陽極では電極が溶け出す反応が起きていますので、銅も、不純物の鉄もアルミニウムもイオンとなって溶け出しています。
ただし、ここで注意して欲しいのは、同じく粗銅の不純物である金や銀などはイオン化傾向が極端に小さいので、イオンになれずに粗銅の真下にそのまま沈殿として積み重なっています。
これらの金や銀などの沈殿のことを陽極泥と言い、銅を生成する時の嬉しい副産物となります。
話を戻して。
溶液中に存在しているイオン(+水素)のイオン化傾向の序列を確認してみると、次のようになります。
よって、水素よりイオン化傾向が大きい鉄イオンやアルミニウムイオンは、イオンでいるのが安定なのでイオンのまま
水素よりイオン化傾向が小さい、銅イオンは電子を受け取って銅の単体となり、陽極に析出します。
ここで析出した純度の高い銅のことを純銅といいます。
銅の工業的製法は、もともとあった銅をさらに大きくしていくようなイメージとなっています。
☆ まとめ
銅の原料は黄銅鉱CuFeS2である。
銅の工業的製法は、
① 黄銅鉱を粗銅にする、②粗銅を電気精錬によって純銅にする
の2段階である。
工程2の電気精錬の各極のイオン反応式は次のようになる。
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【高校化学】塩素の実験的製法を徹底解説!水と濃硫酸を逆にしたら一体どうなる?
塩素の実験的製法は、無機化学において論述問題で問われやすい範囲の一つです。
「水と濃硫酸を逆にするとどうなるか」という問いに戸惑いを覚えた人も多いのではないでしょうか。
今回は塩素の実験的製法において、上の疑問についての答えや実験装置の原理について徹底解説していきたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
☆ 塩素の実験的製法の化学反応式
まずは、塩素の実験的製法の化学反応式について確認していきたいと思います。
塩素の実験的製法の化学反応式は以下の2種類です。
どちらも酸化還元反応を利用しています。
酸化還元の半反応式を作ることができれば自分で導くこともできますが、基本的には時間が間に合わなくなってしまうので覚えることをおすすめします。
今回はよく入試に頻出する、酸化マンガンと塩酸を用いた塩素の実験的製法の装置について確認していきます。
☆ 塩素の実験的製法の装置
塩素の実験的製法の装置は下のようになっています。
酸化マンガンが入ったフラスコに、水、濃硫酸の順番でそれぞれが入っている集気瓶がつながっています。
この順番がとても大切です。それぞれ細かく確認していきましょう。
また、酸化マンガンと塩酸による塩素の実験的製法では、塩素以外の副産物として水と塩化マンガンが生成します。
同時に未反応の塩化水素も不純物として混在している状態です。
塩化マンガンは固体ですので、そのままフラスコ内に残りますので簡単に取り除くことができますが、
水(水蒸気)と塩化水素は塩素の気体と一緒に混ざってしまっています。
水と塩化水素をどのようにして取り除くのかというのが、大事なポイントです。
・水の入った集気びんの役割
水は、不純物である未反応の塩化水素を取り除くために利用します。
物質の溶解性について、
極性分子は極性溶媒に、無極性分子は無極性溶媒に。似たもの同士が互いに溶けやすいということを、理論化学で学習したと思います。
塩化水素は極性分子ですので、同じく極性分子の水に溶かすことができます。
よって、極性分子同士は溶解するという性質を生かして、水で塩化水素を取り除きます。
極性の見分け方はこちら【化学基礎】極性分子と無極性分子の見分け方をわかりやすく解説 - 化学の偏差値が10アップするブログ
・濃硫酸の入った集気びんの役割
濃硫酸は、不純物である水を取り除くために利用します。
濃硫酸は有名な乾燥剤であり、脱水作用を持ちます。
濃硫酸の脱水作用により、水を取り除くことができます。
・塩素の捕集方法
塩素は空気よりも重たい気体ですので、下方置換法で捕集します。
空気の分子量は28.8です。
空気の分子量の導き方は割愛しますが、この数値は使い勝手が良いので覚えてしまうことをおすすめします。
一方、塩素の分子量は71です。
分子量から見ても、塩素が空気よりも重たいことがわかります。
☆ 水と硫酸を逆にすると、なぜダメなのか。
結論からいってしまうと、水と濃硫酸の入っている集気びんを逆に接続すると、純粋な塩素を集めることができません。
その理由を確認していきましょう。
水と濃硫酸の位置を逆にした場合の、塩素の実験的製法の実験装置は下のようになります。
わかりますでしょうか。
上で説明した原理と同じように、逆にした場合は先の濃硫酸で水を、後の水で塩化水素を取り除きます。
せっかく先に濃硫酸で水を取り除いたのに、後から水で塩化水素を取り除いたのでは、
塩化水素を取り除くために利用した水が水蒸気となって、塩素と混在してしまいますよね。
よって、塩素の実験的製法では、水→濃硫酸の順番で集気びんをつなげることになります。
☆ まとめ
塩素の実験的製法の化学反応式は
の2種類である。
塩素の実験的製法の装置において、
水では塩化水素を、濃硫酸では水を取り除き、塩素は下方置換法で捕集する。
集気びんは水→濃硫酸の順番で接続しなくてはならない。
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【高校化学】気体の製法における乾燥剤の選び方や覚え方を徹底解説!【選択方法】
無機化学を勉強していく上で、「この気体の製法において、適切な乾燥剤を選びなさい。」という問題をよく目にしますよね。
高校化学における乾燥剤の種類は多く、選択方法がいまいちよくわからない方もたくさんいると思います。
今回は、そんな乾燥剤の選び方や覚え方などを、語呂合わせを含めて徹底解説していきたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
☆ どういう乾燥剤を選ぶべきなのか
結論から言います。乾燥剤を選択する際に1番大切なのは、
目的の気体と乾燥剤が化学反応を起こさない組み合わせを選ぶことです。
例えば、塩素を最終的に捕集したいとします。
実験で作った塩素には水が入っているので、純粋な塩素を捕集するためには、乾燥剤を用いて水を取り除かなくてはいけません。
塩素は酸性の気体です。ここで塩基性の乾燥剤を用いたら中和反応が起こり、目的物の塩素が消費されてしまいますよね。
目的物の気体が化学変化を起こさないように、目的物の気体と反応しない乾燥剤を選ぶ必要があるのです。
これを踏まえて、具体的な乾燥剤と気体の組み合わせについて確認していきましょう。
☆ 乾燥剤の選択方法
・気体の性質について
乾燥剤と気体が化学反応を起こすかの有無を判断するためには、気体の簡単な性質を押さえておく必要があります。
気体と乾燥剤が起こしうる可能性がある化学反応は、ほぼ中和反応のみです。
よって、代表的な気体の液性と、あとは例外的な気体の性質を確認していきたいと思います。
<気体の液性>
酸性の気体:塩素、二酸化硫黄、二酸化窒素、硫化水素、塩化水素、フッ化水素
上記以外の気体は、すべて中性です。覚えていないものは中性だと思ってください。
<例外で覚えておくべき気体の性質>
硫化水素…硫化水素は代表的な還元剤なので、酸化剤(主に硫酸)とは酸化還元反応を起こしてしまうので不適。
アンモニア…中性の乾燥剤である塩化カルシウムとは化学反応を起こしてしまうので、不適
・乾燥剤の種類
乾燥剤は酸性乾燥剤・中性乾燥剤・塩基性乾燥剤に分類されます。
酸と塩基の組み合わせになってしまう気体と乾燥剤は、中和反応が起こってしまうので不適切です。
代表的な乾燥剤の液性もしっかり覚えて、自分で判断できるようにしましょう。
☆ おまけ 乾燥剤の語呂合わせ
最後に、暗記の手助けとなるために語呂合わせを掲載しておきます。
先にいっておきますが、下ネタありの少し汚い語呂合わせです。
いろいろな語呂合わせが存在しますが、この汚いものが1番無理やり感がなく覚えやすそうなので掲載します。
語呂合わせは、「サリー滝の中 演歌中、尻から下痢でそうだ 参加延期」です。
酸性乾燥剤
サリー:十酸化四リン
の竜:濃硫酸
という内訳です。
しっかり覚えましょう。
☆ まとめ
乾燥剤を選ぶ際には、気体と乾燥剤が化学反応を起こさないような組み合わせを選ぶ必要がある。
乾燥剤は、
「サリー滝の中 演歌中、尻から下痢でそうだ 参加延期」でしっかり覚える。
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【化学基礎】酸と塩基をわかりやすく徹底解説!アレニウスの定義とブレンステッドローリーの定義の違いは?
酸と塩基には2種類の定義があるのは、多くの化学学習者の方達はご存知のはず。
だけど、いまいち2つの定義の違いがわかっていない方も多いのではないのでしょうか。
今回は酸と塩基の2つの定義である
「アレニウスの定義」と「ブレンステッド・ローリーの定義」の違いを例を用いて徹底解説していきたいと思います。
ぜひ最後までご覧になっていってください。
☆ 酸・塩基とは
まず初めに、広い意味での酸と塩基の定義を確認していきたいと思います。
「広義の意味での」酸と塩基の定義です。
酸とは、水素イオンH+を放出するもの。
塩基とは、水酸化物イオンOH−を放出するもの。
となっています。
塩基とは、耳馴染みがあまりない言葉かもしれませんが、中学の理科でいう「アルカリ」のことです。
ここからは、狭い意味ので酸と塩基の定義をみていきましょう。
☆ 2つの酸と塩基の定義
ここからは狭い意味での(狭義における)酸と塩基の定義について確認していきます。
入試問題においても、語句の穴埋め問題等で出題されることが多い分野ですので、自分の言葉で説明できるくらいしっかりと理解してください。
酸と塩基の定義は2種類あります。
定義の名前はどちらも人名です。
・ アレニウスの定義
アレニウスの定義によると、
酸とは、電離をして水素イオンH+を放出するもの。
塩基とは、電離をして水酸化物イオンOH−を放出するもの。
をいいます。
いってしまえば、広義の意味での酸と塩基の定義と同じになっています。
アレニウスの定義で大切なポイントは、アレニウスの定義が使えるのは、あくまでも水中限定であるということ。
水中以外の酸と塩基については、アレニウスの定義を当てはめることはできません。
アレニウスの定義は水中において、「電離した結果、何を放出するか」に着目した定義だといえます。
・ ブレンステッド・ローリーの定義
ブレンステッド・ローリーの定義によると、
酸とは、水素イオンH+を与えるもの。
塩基とは、水素イオンH+を受けとるもの。
のことをいいます。
アレニウスは水中での電離に着目した定義でしたが、
ブレンステッド・ローリーの定義は水素イオンの移動に着目した定義となっています。
例えば、アンモニアなんかは代表的なブレンステッド・ローリーの塩基となっています。
電離をしないのであれば、アンモニアは水中ではどのような状態で存在しているのかというと、
水中の水分子から水素イオンを受け取って、アンモニウムイオンと水酸化物イオンの状態で存在しています。
(※ アンモニアは水に溶けやすい気体です。)
図でブレンステッド・ローリーの定義を表すと次のようになります。
水中に限定されるアレニウスの定義と違って、ブレンステッド・ローリーの定義は場所を問わずに使用することができる、汎用性が高いものとなっています。
☆ まとめ
アレニウスの酸とは、水中で電離をして水素イオンH+を放出するもの
アレニウスの塩基とは、水中で電離をして水酸化物イオンOH−を放出するもの
ブレンステッド・ローリーの酸とは、水素イオンH+を与えるもの
ブレンステッド・ローリーの塩基とは、水素イオンH+を受け取るもの
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【高校化学】電離平衡とは?公式や近似の方法を酢酸やアンモニアを用いて徹底解説!
電離平衡の原理がいまいちよくわからないので、公式を丸暗記している。
…そんな人は、結構多いはず。
今回は、複雑に思われがちな弱酸や弱塩基の電離平衡の公式の導き方を、酢酸やアンモニアを例に徹底解説していきたいと思います。
公式を丸暗記するというよりかは、公式の導入が入試で問われやすいです。
しっかりと理解しながら、公式を自分自身で導けるようにしていきましょう。
☆ 電離平衡とは
電離平衡とは、弱酸や弱塩基の電離における平衡状態のことをいいます。
強酸・強塩基というのは、ご存知の通り、
水素イオンや水酸化物イオンをたくさん出す酸や塩基のことをいいます。
水素イオンや水酸化物イオンをたくさん出すということは、言い換えると、ほぼ完全に電離をするということです。
よって、強酸や強塩基の電離は多くの場合、不可逆反応となりますので平衡状態にはなりません。
一方、今回の話の中心となる弱酸と弱塩基は、水素イオンや水酸化物イオンを出す力があまり大きくない酸や塩基のことをいいます。
水素イオンや水酸化物イオンを出す力が大きくないので、あまり電離をしません。よって、弱酸や弱塩基は電離度が小さくなります。
さらにいうと、弱酸や弱塩基の電離度はほぼ0に近い状態となります。(ゼロではないです。)
弱酸や弱塩基はあまり電離をせず、
分子が電離をしてイオンになる反応と、電離したイオンが分子に戻る反応が絶えず起こっている平衡状態にあります。
この平衡状態が、弱酸や弱塩基における電離平衡であり、この時の平衡定数を電離定数といいます。
以上のことを踏まえて、電離平衡における公式を導いていきましょう。
☆ 弱酸・弱塩基の電離平衡の近似
化学平衡の計算に取り組む時は、「反応前・変化量・反応後」に分けて計算していくのがテッパンの方法でした。
ということで、弱酸である酢酸を例に反応前後・変化量の表を作っていくと下のようになります。
ここで確認したいのが、弱酸・弱塩基において、電離度が非常に小さい時(具体的にいうと電離度α=0.05以下の時)は
1ーα=1と近似できるということです。
弱酸・弱塩基というのは、電離度がとても小さい酸や塩基のことを言いました。
問題文に記載があったり、計算した電離度が0.05以下の場合は、
弱酸・弱塩基分子はほぼ電離していないものとしてみなして、αをほぼ0と近似することができるのです。
(生成物のαを近似すると値が0になってしまうため、反応物のみ近似をします。)
よって、近似後の反応後の組成は次のようになります。
☆ 酢酸や弱塩基の公式
近似後の値を平衡定数の式に代入すると次のようになります。
今回例としてあげた酢酸は酸ですので、酸(acid)の頭文字をとって電離定数をKaと表します。
塩基の時は、塩基(base)の頭文字をとって電離定数はKbと表されます。
電離定数Kaの式から、電離定数で使用頻度の高い公式を導いていきましょう。
・ 電離定数の公式
先ほどの電離定数Kaをさらに変形していくと次のようになります。
よって、電離定数Kaを表す公式は
となります。
・ 電離度αの公式
電離度αを求める公式を確認していきます。
電離定数の式を変形すると、電離度αを表す公式は
となります。
・ 水素イオン濃度(pH)を求める公式
電離平衡の反応前後・変化量の表から、水素イオン濃度は次のような式で表されるのでした。
ここ、先ほどの電離度αの公式を代入して変形すると、水素イオン濃度の公式を導くことができます。
ちなみに、水素イオン濃度を求めることができれば、pHも自動的に求めることができます
☆ アンモニア(弱塩基)の電離平衡
アンモニアの電離平衡も、基本的には酢酸の電離平衡と考え方は同じです。
弱酸の公式の中の電離定数KaをKbに置き換えるだけとなっています。
ただ、アンモニアはブレンステッドローリーの塩基ですので、電離をして水酸化物イオンを出すわけではありません。
水分子から水素イオンを受け取ることで、水中では水酸化物イオンとアンモニウムイオンの形で存在しています。
この電離平衡の式には水分子が含まれていますが、
アンモニアと反応している水分子はごくわずかであり、アンモニアと反応している水分子以外にもたくさんの水分子が水溶液中には存在しているはずです。
よって、アンモニアの電離平衡において水分子は大量にあるものとしてみなし、定数として扱います。
要するに水分子を無視して、平衡定数の立式をしても良いということです。
水分子を無視できることが、唯一弱酸の電離平衡との違う点ですので、しっかりと確認しておきましょう。
☆ まとめ
電離平衡とは
弱酸・弱塩基において、分子が電離をしてイオンになる反応とイオンが分子に戻る反応との平衡状態のことである。
弱酸・弱塩基における公式一覧は次のようになっている。
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【高校化学】理想気体とは?実在気体との違いを簡単に解説!圧縮率因子とは
理想気体と実在気体の違いがイマイチよくわからない、
違いをなかなかイメージしづらい、
そう考えている人は、多いと思います。
今回は理想気体と実在気体の違いを、わかりやすく徹底解説していきたいと思います。
ぜひ、最後までご覧ください。
☆ 理想気体と実在気体の違い
理想気体とは、
分子自身の体積がなく、分子間力が働いていない気体のことをいいます。
理想気体は、理想気体の状態方程式が常に成立する気体です。
反対に実在気体とはなんなのかというと、理想とはちがう現実に存在している気体のことで、
理想気体とは反対に
・自身の体積が存在していて、
・分子間力が働いている
理想気体の状態方程式が成立しない気体のことをいいます。
ここからは「圧縮率因子」という概念を使って、実在気体と理想気体との違いをより細く見ていきたいと思います。
☆ 圧縮率因子
圧縮率因子とは、n=1molのときのPV/RTの値のことをいいます。
まだピンとこないと思います。
理想気体の状態方程式PV=nRTに、(圧縮率因子とはn=1molのときの気体の話なので)n=1を代入すると、
PV=RTと変形することができ、それをさらに式変形すると、1=PV/RTとなります。
PV/RT=1となるのは、理想気体のときのみです。
つまり、何がいいたいのかというと、
圧縮率因子とは、PV/RTの値のことで、理想気体の圧縮率因子は「1」となります。
よって、圧縮率因子が「1」から離れていれば離れているほど、理想気体から遠ざかっているということになります。
圧縮率因子は、理想(気体)と現実(気体)の差がどれくらいあるのかを表す指標なわけです。
ここからは実在気体の圧縮率因子の値がどのようになっているのかを確認していきましょう。
☆ 実在の気体の圧縮率因子
実在気体と理想気体との違いは「分子間力があること」と「自分自身の体積があること」です。
「分子間力があること」と「自分自身の体積があること」が圧縮率因子にどのような影響を与えているのか
1つずつ確認していきたいと思います。
・分子間力の影響
まず、大前提としておさえて欲しい知識があります。
気体の体積とは、「気体の粒子が動いている範囲のこと」をいいます。
これを踏まえて見ていきましょう。
実在気体は分子間力が働いているので、
理想気体よりも、熱運動が緩やかになっています。
分子同士がガッツリ手を結んでいるので、身動きが取りづらい状況です。
よって、実在気体は理想気体と比べて動ける範囲、すなわち気体の体積が小さくなります。
その結果、圧縮率因子の値は1よりも小さくなります。
よく理想気体と実在気体の範囲で見られる圧縮率因子のグラフがありますが(下の画像のようなもの)
分子間力が強く働けば働くほど、気体の体積は小さくなり、グラフは下のほうにずれ込みます。
分子間力は分子量が大きい物質ほど強く働くので、分子量が大きい物質ほど圧縮率因子のグラフは下に大きくずれ込むことになります。
(だから、上の画像でも分子量が1番大きいCO2が、1番大きくグラフの下にずれ込んでいますね。)
・分子自身の体積の影響
結論から先に行ってしまうと、分子自身の体積があると気体の体積は大きくなります。
繰り返しますが、気体の体積は「気体が動いている範囲のこと」です。
分子自身の体積がある場所には気体は動くことができないので、自ずと気体が動く範囲は大きくなってしまうのです。
分子自身の体積だけ、かさ増しされると考えたらわかりやすいかもしれません。
よって、圧縮率因子の値は大きくなり、圧縮率因子のグラフは1よりも大きくなります。
☆ どうすれば実在気体は理想気体に近づくことができるか
理想と現実のギャップは大きいですね。
では、どうすれば実在気体は理想気体に近づくことができるのでしょうか。
実在気体が理想気体に近づくには
高温・低圧にすればいいです。
高温にして熱運動が激しくなれば、分子間力をぶち切ることができます。
分子間力の影響が無視できるようになるのです。
低圧にすると、分子自身の体積が無視できるようになります。
低圧にすると分子同士の距離が遠くなります。
単位体積あたりの分子の体積が小さくなるのです。
☆ まとめ
実在気体と理想気体の違いは
・分子自身の体積があるかどうか
・分子間力が働いているかどうか
である。
圧縮率因子は、理想気体と実在気体のギャップを知るための値で
圧縮率因子が1から離れているほど、理想気体とは遠い状態の気体である。
理想気体に近づくためには、高温・低圧にすればいい。
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